白夜行/東野圭吾
更新日:2015年9月3日
「探偵ガリレオ」シリーズで一躍有名になった東野圭吾さんの代表作。文庫でも850ページを超える長編で、手に取るのを一瞬ためらう分厚さです。薄めの文庫の3冊分くらいあります。
19年前に起こった殺人事件の関係者のその後をたどり、背後の真実が何かを探り当てるタイプのストーリーで、犯人当て・方法当て・動機当てをメインとした推理小説とは少し違います。ドラマや映画にもなり、海外でもリメイクされたりしたので、ご存じの方も多いと思います。
主人公の内心の記述はほとんど排除されています。ストーリーに出てくる様々な伏線も、必ずしも明確に解決されるわけではありません。そのため、フリークの中で様々な解釈がされており、その受け取り方も千差万別という、不思議な作品です。
同じ東野さんの「容疑者Xの献身」のインパクトが強すぎて(個人的にはこちらのほうが好みです)、どうしてもそれと比べてみてしまうのですが、推理よりもストーリーを重視する方にとっては、東野さんの最高傑作と感じられるのではないでしょうか。
ところで、この作品、とにかく人が死にます。殺人以外の犯罪もさらっと実行されるので、内容的にはかなりどぎついはずなのですが、これを悲劇的な、刹那的な印象にしてしまうところが、東野さんの筆力だと思いました。